効率的な勉強方法について考える Part1

1.勉強の効果=素質×努力の質×努力の量

僕が勉強をするときのモットーは


人の3倍の効率で人の時間の半分勉強


です・・・・
まあ、楽をしたいというのもありますが、社会人なので勉強時間の確保が難しかったのと、仕事が塾の先生(数学)なので効率的な勉強法には人よりは詳しいという特性を持っているためです。これから勉強をされる方、勉強中の方が読んで参考にしていただければ幸いです。


ちなみに、僕は、06合格目標TAC通信(カセット)1.5年コース生で、今論文の結果待ちです。仕事しながらの割にはわれながらうまくいったなあ、と思ってます。まあ、論文の結果はまだ出ていないのですけどね。


さて、大まかにいえば勉強の効果は


「勉強の効果」=「その科目に対する素質」×「勉強の質」×「勉強の量」


で定まります。従って絶対的な学習の量が多いほど、第2項の重要性は増すわけですが、僕の見るところ、担当している生徒達も、会計士試験の勉強をされている方も第3項を変化させることに躍起になっている方が多いようです。実は、工夫すれば変化させやすいのは第2項なんですけどね。そのことについてちょっと述べてみたいと思います。


それから、「努力すれば必ず結果は出る」という言葉は嘘です。少なくとも「期限付き」の試験では。ちょっと教える仕事をすれば、生徒の飲み込みの早さには残酷なまでの差があることはすぐにわかりますし、高1から一生懸命に努力を積み重ねた生徒を、才能のある生徒が数ヶ月〜1年程度の努力であっさり抜いていく局面を何度も見ています。ただ、先天的な「素質」はコントロールできる変数ではありませんから、「勉強の質」と「勉強の量」というコントロール可能な変数をバランスよく両方いじるしかありません。


で、「先生としての目」から見るところ「勉強の質」をうまくコントロールできている人は、そう多くないんです。


2.記憶のメカニズムと効果的な復習方法

記憶のメカニズムを知ることは、勉強の質を上げる上で大切な条件なのですが、意外とご存じない方が多いようです。覚えることがたくさんあるのに、記憶のメカニズムを理解していないのは致命的で、最低限必要な部分は理解しておくべきです。


分類や名前の付け方は様々あるのですが、資格試験を学習する際に抑えておくべきポイントは「海馬があやつる記憶」と「側頭葉があやつる記憶」の違いです。一般に、外界から入った記憶の大半はまず「海馬」に保存されます。この記憶は、数時間でその大半が失われ、1ヶ月以内にはほとんど消滅します。その「海馬」に存在する記憶のうち一定の条件をみたすものが「側頭葉」に移され長期保存されます。当然勉強では「どうやって長期の記憶にするか?」が問題となります。
一定の条件のうち、特に大切なものが2つあります。1つは「理解と記憶の関係」であり、これは後に述べます。もう一つは「反復」です。そんな当たり前のこと知ってます、って人が多いんですが、問題は「効率的な復習のタイミング」を知らない人が多いことです。


普段仕事をしていると生徒に「先生、授業後にすぐ復習をすると、授業を覚えているので解けてしまいます。復習は授業からどのくらいたってやるのがよいですか?」という質問を受けます。結論からいうと


「授業後すぐ」


なのですが、納得しない生徒も多くいるので、まず先に述べた記憶のメカニズムを説明し、その上で復習を「実力をつけるための復習」と「実力判断のための復習」に分けて説明します。「実力をつけるための復習」は記憶が「海馬」に存在するうちにやらなければ意味がありません。「長期記憶」にしなければ意味がないのですから。にもかかわらず、「一回学習して海馬に記憶する」→「しばらく放置して忘れる」→「もう一回学習して再び海馬」→「しばらく放置して忘れる」・・・以下同文、を繰り返している人を多く見かけます。勉強をしていることは認めますが、実力はなかなか伸びません。定量的に判断できているわけではありませんが


「その日の15分の復習は、後日の1時間の復習に匹敵する」


くらいに理解しておくのがよいと思います。


それに対して「実力を判断」して、今後の勉強の指針を作るための復習(というか要するにテスト)をしたいときは「長期記憶」をテストしなくてはいけません。従って、時間をおいてから再びやってみなくてはいけない、という結論になります。
ただし、モチベーションに関わる部分を除けば、後者が本当に必要な局面はほとんどありません。テストを行って自分の順位を確認したい気持ちは理解はできますが、順位を理解したからといってやるべきことは、できなかった問題をできるようにすることであることには変わりがないのです。特に公認会計士試験は受験者も合格者も多く、実質的には「人数勝負」の試験というようりは「合格点」が最初から決まっている試験です。(実際には、合格点が毎年違うだろ、って指摘はあっているのですが、平均的な過去問で合格点を取れる人が取れる点が合格点になる、という意味では同じなのです。ま、今年みたいに合格人数が大きく変わる可能性があるときは事情が違いますが)


従って、いちいち順位を気にする意味はほとんどないため、僕は答練を一度も提出しませんでした。「提出して成績がわかるメリット」よりも「答案が手元からなくなるデメリット」の方がはるかに大きいからです。その場ですぐに丸付けをしてすぐに復習することが大切で、そのためには答案が必要なのです。(無論、答案をコピーしておいて提出する、というのであればOKです)とにもかくにも「解いて数時間以内に復習する」ことが大切なのです。落ち着いて考えれば


「テストとして解いたみた問題で、解けた問題は次出てきても多分解ける。解けなかった問題は次出てきたら、多分解けない。従って、解けなかった問題に対して手を打たなければ、苦労してテストを解いた意味はほとんどない」


ということは当たり前なのですが、多くの人がそのことに気づいていません。(「気づいてますけど、復習はできてません」は「気づいていない」に僕は分類しています。)「テストが帰ってくれば復習すればいいでしょ」という主張もありますが、問題をもう一度読んで復習しなおすのは時間効率が悪く、しかも前述の記憶のメカニズムを考えれば記憶効率も落ちます。
ですから、答練は解き終わった瞬間にすぐに答え合わせをして、できなかった問題はできるようになるまでその場で復習し解きなおしていました。きれいなノートを作ることにはこだわりませんでしたが、答練の間違いはきちんと保存して何度も復習しました。


3.勉強を生活の中に取り込む

これは、特に仕事をされている方にですが、生活リズムの中に勉強をどう組み込むか、が大切だと思います。「さあ勉強するぞ」と意気込んでする勉強、ではない「生活のリズムに組み込まれた勉強」の時間を確保することが重要です。僕は「食事時」をうまく利用しました。平日は基本的に「通勤時間中は授業を聞く」、「昼食は会社近くのランチで混雑時を外して1時間」、「夜は地元のファミレスで2時間」という感じで生活の中に3〜4時間の勉強時間を組み込んでいました。そういうところは工夫しないと学生の方や、仕事をされてない方に追いつけないですからね。


それから、「電車の中で聞いた授業に対する問題演習を昼食時に、夕食時に」するように努めていました。そういった決まったリズムを作ることが何より大切です。


4.丸暗記と単語帳のススメ

よく「丸暗記は駄目だ。そんな勉強は応用力がない。理解することが大切で、そうすれば自然に覚えられる。だから、単語帳とか作って丸暗記してもしょうがない」などとのたまう方がいらっしゃいますが


知ったかぶりをすんじゃねえ


といつも思います。確かに「理解が暗記を助ける」局面はたくさんあり、そういったものを丸暗記するのは非効率的です。しかし、それと同じくらい「暗記が理解を助ける」局面があります。はじめは、よくわからずに覚えて解いていたものが、何度もやるうちに意味がわかってくる、そんな経験は誰しもあるはずです。大切なのは「何を暗記すべきか?」の選定と「効率的な暗記と記憶の方法論」を考えることです。にもかかわらず、そういった発言が絶えないのは「そういっている方がかっこよく聞こえる」からです。だまされてはいけません。


「何を暗記すべきか?」を論じだすと各論になるので、ここでは「効率的な暗記と記憶の方法」について述べます。暗記の方法論を考える上でもっとも大切なのは「単語帳」の使い方です。単語帳というと「丸暗記」の象徴のように思われていますが、実は単語帳と丸暗記はほとんど関係がありません。例えば、単語帳を用いて財務諸表論で「減価償却の定義」を覚えたとします。これを言葉だけ丸暗記する人もいるでしょうし、頭の中で具体的な取引を思い浮かべ、簿記の仕訳を考えてP/LやB/Sとなつながりをイメージしながら単語帳をめくる人もいるでしょう。「暗記」になるか「理解を伴った記憶」になるかは、「単語帳を使うかどうか」ということとあまり関係がないのです。


では、単語帳の最大のポイントは何かというと「表面と裏面があることによる覚えるべき情報の分断」です。これは復習の際に「ノートや解答の読み込み」だけでなく「ノートを閉じて自分で解く」ことが必要である、ということと似た構造をしています。すなわち、「書いてあることを見て正しいと理解する」ことと「頭の中に格納されていて、自分で引き出せる」ということは別であり、「知識を覚えること」は後者を目指さなくてはいけません。
例えば正誤の判定や知識間の流れやつながりを確認する目的で会計基準等を学習する際は、読み込みを中心とした学習でよいのですが、論証や計算のスタートになる知識は「自分の頭の中から引き出せる」ようになっていないとだめであり、いわゆる「読み込み型」学習ではだめなのです。従って、問題を見たときに答えが目に入らない単語帳が有効なのです。


以上のことから僕は、TACの授業で単語帳の作成が明示されなかった「管理会計論」と「企業法」、「租税法」に関しても暗記すべき事項は僕は単語帳を作っていました。覚えるべきことは講師の指示がなくても単語帳を作ったほうがよいと思います。
正直なところをいえば、通信カセット生の立場から言うと、有料でもかまわないんで単語帳はTACで作ってほしいんですよね。電車の中で、単語帳まで作るのは無理なんです。1つ3千円でも間違いなく買います。




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Part2に続く