差異分析と責任会計②

監査の仕事を始めると、「期間帰属」にはとても詳しくなりますし、神経を払うようになります。この間修正仕訳をきったのですが、やはり期間帰属に関するものでした。簡単な仕訳なんですがあってる自信が異様になかったです(笑)。


机の上で勉強していたときは気づかなかったことですが、「確信犯」以外の虚偽表示は期間帰属に関わるものが多いわけです。さすがに、実際に存在しない資産や売上の計上、簿外の負債や費用はさすがにあまりありません。ただ、期間帰属は気がつかないことが結構あるんですね。仕訳的にはあってるわけですし。机の上で勉強してるときは「期間帰属」はすぐ忘れていたのですが、実務につくと最初に思いつく監査要点かもしれません。

以下この間の続きです。

2.市場総需要差異と市場占有率差異

市場総需要差異と市場占有率差異ですが、私は縦軸と横軸のある図がいいと思います。以下、数量差異と価格差異の図と並べて図を描きながら読んでみてください。数量・価格差異の図で、価格を縦軸にとっていらっしゃるなら、市場総需要を縦軸にとるのがわかりやすいです(横軸なら横軸)。何故なら、市場占有率差異が営業員の責任で、市場総需要差異は外部要因(ないし、市場予測を間違えた意思決定をできるレベルの人間の責任)だからです。ですから、市場占有率差異には、市場総需要の影響を含めないように差異を分析するわけです。つまり


市場占有率差異)=(実際市場占有率−予定市場占有率)×(予定市場総需要)
(市場総需要差異)=(実際市場総需要−予定市場総需要)×(実際市場占有率


とするんですね。図を描きながらここの理解をつかんでください。図は、どれをかいてもOKですが、つに統一することが大切です。解答の図にあわせる必要はなく、常に自分の理解にあわせて図を書き直せればOKです。一番しっくり来るとお感じになる図を使ってください。


3.配合差異と歩留差異

この分析は、今まで2つとは全く異なるものですから同じようにはいきません。個人的には、2つあわせた差異は大切だと思いますが、分析した差異にはあまり意味がないと思います。ただ、テキストに乗っていますからねえ。


意味がないと思う理由は第一に「配合率を変えると減損率がかわる」からです。ですから、「減損差異=配合を変えることにより変化した減損差異+当期の実際の作業の可否による減損差異」となりますので、予定と実際の配合率がかわったときの減損差異をみてもあまり意味がないんです。実際の配合率で配合したときの標準減損量がわかっているなら、意味があると思いますけどね。
そして、第二に今日の工場では(少なくとも原価計算をやれるレベルの工場では)予定した配合率を間違えることはほとんどないからです。実験室で、いろいろと配合を換えて研究することはありますけどね。だから、配合差異にもあまり意味がないんです。


ただ、この手の問題で減損差異の計算の仕方を間違える、ないし計算の仕方はわかるけど意味は不明という方は結構いらっしゃると思いますので、そこだけはきちんと説明してみます。配合差異はどうでもいいので一種類の材料で説明します。例えば、100kg材料を投入すると標準減損が20kgのときに、100kg投入すると30kg減損しました。さて減損差異は何kgでしょう?というと、ちらほら「10kg」とお答えになる方がいらっしゃいますが、これは誤りですね。正しい計算方法は「70kgの完成品」を作るのに、標準で材料は「70÷0・8=87.5kg」必要なので100kgとの差をとって12.5kgが減損差異ですね。さて、何故こんな計算になるのでしょうか。


答えは「標準原価計算をベースに、追加の差異を製品原価に組み込むため」ですね。標準減損が決まっているということは、原価計算として標準原価計算を想定しているということです。標準原価計算では一定割合の減損が標準原価に組み込まれているため、出た減損を「標準原価に組み込まれている標準減損とそこから足の出た減損差異に分けて、減損差異をを追加で原価配分したり、金額が僅少であれば原価外で処理したりしなくてはいけないわけです。ぅなわちこのような標準原価計算の考え方を前提にすると、どのような計算をすれば「追加配分すべき差異が計算できるか?」がこの問のメインテーマです。


標準原価計算では完成品は、まず標準原価で振り替えられるわけですが、「1kgの完成品に配分される製品原価」は決まっていますね。この問でいえば70kgの完成品に振り返る製品原価(正確に言えば原料費)は決まっているわけですね。標準減損は全体の2割のため、1kgの製品に対する標準の原料費は当然、1÷0.8=1.25kgと計算されています。つまり、(加工費に関する差異を除けば)上で計算した87.5kgの原料費が70kgの完成品の標準原価に組み込まれています。つまり17.5kg分の差異は標準原価に組み込まれているため減損差異ではなく、残りの12.5kgは標準原価に組み込まれていないため、差異として認識し、後から、製品原価に追加配布するなり必要な処理をしなくてはいけないわけです


この計算はよく出てくる重要なものなのですが、考え方は以外と理解されていない方が多いのではないかと感じています。