論文式試験の得点調整について part1 〜得点率か偏差値か?〜

今日は、効率的な〜シリーズはお休みです。


今回の公認会計士試験から、受験人数の増加に従って
http://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/kijuntou/06.html
にある数式で換算した得点で合格を決めるようになりました。その結果、今年は52%の得点率で論文式試験は合格でした。


さて、この数字ちょっと低いと思いません?特に、偏差値の知識がある方は「50%が半分のはずだけどなあ?」と思ってらっしゃるかもしれません。ラインが低かった1つの大きな原因は会計士補込みで切っていることですが、それにしても?と感じている人も多いでしょう。統計学が得意(科目合格)ですから、そういった視点から分析してみます。


1.あの数字は偏差値?得点率?

まず、あの得点率は


得点率って書いてるけど、実質偏差値でしょ


という主張が結構多いのですが、実際には


実質的にも偏差値ではない


というのが正しい解釈です。偏差値の意味は分布が正規分布であると仮定したときに「上から数えて何パーセントくらいのところにいるか?」を数値化したものです。今年の合格率は30%強(士補込み)なので、偏差値でいうと55くらいです。どう考えても計算があいません。

2.実質的に偏差値でなくなる理由

問題は偏差値換算した各大問の点数(これは偏差値に正比例し、実質的に偏差値です)を、出した後、①合算してその科目の点数を出し、②加重平均して全体の得点率を出す、ことにあります。この2つの作業でもともとの偏差値よりも、「各科目の得点率」は普通の偏差値よりも50の近くに分布し、「得点率と発表された数字」はさらに50の近くに分布することになります。


例えば、大問2つ(各50点満点)で構成される科目を考えます。このときに得点調整後の各大問の得点率の分布は50を平均として、偏差値と完全に同じ形で分布をします。その後、2つの大問の得点を合算すると分布がどのように変わるかが問題です。


もし、仮に全員が2つの大問で同じ点数をとっていれば分布はかわりませんが、実際にはそんなことはほとんどなく、
60と40をとると50
55と47をとると51
60と50をとると55
70と55をとると62.5
といった形で得点率は平均化され、1つの科目の得点率の分布は偏差値に比して50付近に近づきます。そうして作った得点率をさらに5科目で加重平均するので、さらに得点率は50に近づきます。ですから「得点率」は偏差値とは異なる意味の数値になり、「偏差値」よりも50に近づいた分布をし、52パーセントで合格といった状況が生まれたわけです。




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論文式試験の得点調整について part2 〜足切Fの固有リスクが高い科目は?〜に続く